看護師目指す金大生 高齢、障害者の歩み記録

看護師目指す金大生 高齢、障害者の歩み記録

 金沢大で看護師を目指して学んでいる学生たちが、四月から聞き書きサークル「星ことば」を立ち上げ、活動をスタートさせる。高齢者、障害者ら市井の人たちに耳を傾け、その人たちの人生の歩みを記録としてつづる。「患者に人として向き合い、寄り添える医療従事者になりたい」−。そんな思いを抱いている。 (本安幸則)

 サークルを立ち上げるのは、保健学科で看護学を専攻する四年の山田奈津子さん(30)ら四人。同大の榊原千秋助教(地域看護学)が顧問を務める。

 医療従事者にとって聞き書きへの取り組みは「患者とのコミュニケーション能力を高める」と榊原助教は説明。また「生きた証しを残すことが、終末期にある患者へのトータルケアにもなる」という。

 榊原助教が昨年、小松市で開催した「聞き書き講座」に学生が参加したのが、サークル結成のきっかけ。聞き書きで「人の命を救ったり、人生を変えたりすることができる」との思いを強くした。

 サークル結成の中心になった山田さんは、かつて東京の大学病院で五年間、看護師として勤務した。急性期の医療現場で忙殺される毎日を過ごすうち、患者と向き合えていない自分の看護師としての在り方に疑問が沸いた。

 「患者とは、業務ではなく、人として向き合うことが良いケアになる」と考え病院を退職。大学で学び直そうと地元・石川に戻り同大保健学科三年に編入学した。サークル名には「言葉の一つ一つを大切にしたい」との思いを込めた。

 サークル代表を務める三年の疋島啓子さん(20)は「その人の人生の楽しいことつらいこと、青春時代が詰まった記録が残したい」。二年の丸山佳苗さん(19)も「コミュニケーション能力を身に付け、人間としても成長したい」と語る。

 サークルは、四〜七月まで計三回の聞き書き講座を計画。学生だけでなく、保健医療従事者を対象に参加を募っている。「日本聞き書き学会講師」を務める小田豊二さんらを招き、基礎から学び、聞き書きを実践。榊原助教は「いろんな出会いが生まれる場になれば」と話している。