デカしんみり 57回目誕生日 いしかわ動物園 山本園長が退職

デカしんみり 57回目誕生日 いしかわ動物園 山本園長が退職

 いしかわ動物園能美市)の園長、山本康夫さん(65)が三十一日付で退職し、長年愛した動物たちに別れを告げた。この日は同園で飼育されている国内最高齢の雌カバ「デカ」の五十七回目の誕生日。全国各地に同園の名を広めたデカが、園長の“卒業”を見送った。

 元県職員の山本さんは、動物園が民間から県の公社に受け継がれ、再スタートする直前の一九九三年から関連業務を担当。九八年四月に園長となった。

 一番の思い出は、九九年に金沢市卯辰山から旧辰口町(現能美市)への引っ越し作業。動物を移動させる際にパトカーが先導し、沿道の県民が手を振って見守る姿に「感動した」という。

 新動物園としてスタート後は「エコ動物園」としてPRし、二〇〇一年には第五回環境レポート大賞で環境大臣賞を受賞。来園者と動物の距離を縮めようと、職員による動物の解説「お食事ガイド」を考案するなどした。

 デカとは担当技師の坂牧朝仁さんとともに長い付き合い。デカが〇六年三月に日本の最高齢となった喜びも一緒にかみしめた。

 当のデカは体調管理が難しいとされる春先も「食欲があり、絶好調」(坂牧さん)。山本さんは「デカのおかげで、動物園に愛着を持たれた」と感謝し、初対面した約十五年前を懐かしみながら「動きは鈍ってもまだまだ元気。元気でいることが何より」と話した。

 「種の保存や環境保全など動物園の役割はますます大きくなる。また一県民として遊びに来たいですね」と山本さん。ピンク色のカバがプリントされたネクタイを静かに外した。 (田嶋豊)