現代版「百工比照」作成へ 金沢市が新年度から 伝統工芸の解説書や映像を記録

加賀友禅の制作工程。工程の様子も現代版「百工比照」に収められる



加賀友禅の制作工程。工程の様子も現代版「百工比照」に収められる

 加賀藩五代藩主前田綱紀が当時の工芸技術をえりすぐってまとめた「百工比照(ひゃく
こうひしょう)」の現代版作成に向けた取り組みが動き出す。金沢市は新年度、伝統工芸
の職人や有識者による検討委員会を設置し、資料収集や学術研究に着手する。五年計画で
各分野の技の粋を伝える解説書づくりや、映像による制作工程の記録などを通じ、伝統工
芸の厚い土壌を将来に引き継ぐ。
 市は新年度当初予算案に市制百二十周年記念事業として、平成の「百工比照」収集作成
事業費三百万円を盛り込む。
 新年度は一つの伝統工芸分野を定めて研究が進められる。検討委が学術研究の方向性を
示し、金沢美大が資料収集や実物見本の制作、解説書づくりなどに当たる。実物見本や映
像の制作は産業用と学術保存用の二種類をまとめる方向という。
 金沢美大は工芸、芸術学、デザイン専攻の教授らで研究チームを組織し、古文書の解読
や職人への聞き取り調査を行う。
 研究テーマとしては加賀友禅九谷焼金沢仏壇といった伝統工芸の技法、道具、素材
などが想定されている。加賀竿や菓子木型、手捺染(てなっせん)型彫刻など既に後継者
が途絶えた伝統工芸品の復興や、和傘や銅鑼(どら)など希少伝統工芸品の継承支援にも
取り組む。さらに、ガラスに金沢箔(はく)を張り付ける技術など、伝統工芸の新たな取
り組みについても資料収集、研究を進める。
 二〇〇七(平成十九)年十一月の金沢創造都市会議では、都市の魅力づけの一つとして
、現代版「百工比照」の作成を求める意見が出された。市は国連教育科学文化機関(ユネ
スコ)にクラフト(工芸)分野での「創造都市ネットワーク」登録を申請しており、「平
成の百工比照作成を通じ、金沢の工芸文化の研究を深め、創造都市としての価値を高めた
い」としている。
 百工比照 工芸各分野にわたる資料の集大成。各種伝統工芸の実物見本やひな型、図な
どがある。保管は材質・用途・形態別に11の箱と付属の2つの箱に収まり、総点数は2
000点以上に上るとされる。前田育徳会が所蔵し、1975(昭和50)年に一括して
重要文化財に指定された。