七尾湾西湾、60年前から環境悪化 金大大学院・谷口さん調査

海底の有孔虫から能登半島の海洋環境に迫った谷口さん(手前)と木戸屋さん(右奥)、加藤教授(左)=金大角間キャンパス



海底の有孔虫から能登半島の海洋環境に迫った谷口さん(手前)と木戸屋さん(右奥)、加藤教授(左)=金大角間キャンパス

 七尾湾西湾の環境は今から約六十年前に悪化が始まったことが、金大大学院自然科学研
究科博士前期課程二年の谷口麻由佳さん(25)の卒業研究で明らかになった。海の原生
生物「有孔虫」のうち、富栄養化・貧酸素の環境で増加する種が一九四〇年代後半から増
えていた。有孔虫を利用した海底調査は今回が日本海側初の成果となる。
 有孔虫は体長一ミリもないごく小さな生き物。五億年以上前から地球上に生息しており
、海底の堆積(たいせき)物を年代ごとに調べれば中にある有孔虫の化石から当時の自然
環境などが推測できる。
 谷口さんは日本海側最大の内海である七尾湾の環境に興味を抱き、加藤道雄教授の指導
の下で西湾、南湾、北湾の三カ所で柱状堆積物を採取。四百年以上さかのぼって調べた結
果、西湾では一九四〇年代後半からある種の有孔虫だけがそれまでの二−四倍に増えてい
た。
 この有孔虫は、大阪湾で一九二〇年代にそれまでの約三十倍と爆発的に増加したことが
知られており、水中の肥料分の増加で起こる富栄養化の海で増殖する種だった。
 谷口さんによると、七尾湾では一九一〇(明治四十三)年に肥料工場が完成、二五(大
正十四)年からカキの養殖が始まり、二九(昭和四)年にセメント工場が稼働した。四二
(同十七)年には西湾と南湾の富栄養化を指摘する論文が出ている。
 谷口さんは「七尾湾の汚染は大阪湾と比べて軽微なもの」としながら「人間の産業活動
が七尾湾の海底環境にも影響した」と推測している。