戦争で閉鎖 旧粟津演舞場 67年ぶりに復活へ

戦争で閉鎖 旧粟津演舞場 67年ぶりに復活へ

 第二次世界大戦の激化で、一九四二(昭和十七)年に閉鎖した小松市井口町の旧粟津演舞場が今夏、六十七年ぶりに復活し、三日間限定の公演が上演される見通しになった。演舞場は九月以降に解体される予定だが、全国的にも希少な芝居小屋を守ろうと、住民らで組織する「粟津演舞場を救う会」などが、移築解体に向けた調査にも乗り出している。(小柳悠志)

 演舞場は一九三三(昭和八)年、全国旅館組合総会の開催に合わせ建てられた約二百八十平方メートルの芝居小屋。入り母屋造りの屋根が延びる優美な外観が特徴。かつて地元青年団や県外のプロが公演していたが、九年で軍需工場に転用され閉鎖。その後も鉄工所、旅館と変遷を重ね、舞台が撤去されるなどし、地元でも忘れ去られた。

 現在は粟津温泉の旅館「辻のや花乃庄」が所有し、しばらく従業員寮に使われた。二〇〇四年、古建築修復技術者の賀古唯義さん(54)=富山県高岡市=の調査で演舞場と判明したことから、住民らが救う会を創設した。

 計画では今後、室内の構造を調べ、建物全体の簡易補強を実施。七月に三日間、地元の伝統芸能団体による公演を企画し、芝居小屋の歴史について講演会も行う。

 この後、演舞場は解体される予定だが、賀古さんと製材業社社長の山本博之さん(48)=小松市白山田町=が将来別の場所で復元することを視野に、建材の取り外しを発案。近くの那谷寺が保管場所を提供することになった。

 かつて演舞場に子役で出演したことのある土山良智さん(79)=同市津波倉町=は「温泉街と演舞場がにぎわった当時の記憶は今も鮮やか。ぜひ公演が実現してほしい」と話している。

 救う会は、旧演舞場の当時の様子を撮った写真を募っている。問い合わせは山本製材=電話0761(65)1009=へ。