キリスト生きている? ミケランジェロの「ピエタ」 金沢医大の篠原教授、解剖学で新設

ミケランジェロが制作したサン・ピエトロ大聖堂のピエタ(篠原教授撮影)



ミケランジェロが制作したサン・ピエトロ大聖堂ピエタ(篠原教授撮影)

 金沢医科大医学部の篠原治道教授は二十八日までに、ルネサンス期の彫刻家ミケランジ
ェロの作品「ピエタ」で表現されたキリストの亡きがらに、解剖学の見地から生きている
兆候を確認できるという新説をまとめた。
 「ピエタ」は十字架で磔(はりつけ)にされたキリストの遺体を、聖母マリアが抱く姿
をモチーフにした作品。ミケランジェロが制作したピエタ四作品のうち、イタリア・ロー
マのサン・ピエトロ大聖堂に収蔵される作品が最もよく知られている。
 篠原教授は高校生のころから、ギリシャ・ローマの芸術作品に興味を持ち、独学を続け
てきた。とりわけミケランジェロについては、雑誌「最新医学」でエッセーを連載し、本
にまとめている。サン・ピエトロ大聖堂にはこれまで、二十回以上も足を運び、解剖学の
視点から作品を丹念に観察してきた。
 その結果、キリストの皮膚表面には静脈が浮き出ていることが分かった。これは筋の収
縮や呼吸によって心臓に戻る静脈血量が増加していることを示し、現代医学では生存の証
しになるという。
 篠原教授によると、ミケランジェロピエタを制作した十五世紀末、身体は精神的な力
「精気」で動いていたと考えられていた。静脈が浮き出ることは精気が満ちた状態で、当
時の医学でも生きている証拠になるという。
 一方、キリストの右脇腹にある傷について篠原教授は、あばら骨の位置からみて当時最
も重要な臓器と考えられていた肝臓に達する致命傷だと判断した。

 ミケランジェロがキリストの死を示す傷と、生きている特徴の両方を表現した意図につ
いて、篠原教授は「キリストの神性と、肉体の死という二面性を両立させたのではないか
」と分析している。