繊維の力で崩落防止 金沢工大・木村教授らがコンクリ強化新工法

ガラス繊維を格子状に編んだ特殊シートを開発した木村教授(右)と山本さん=金沢工大



ガラス繊維を格子状に編んだ特殊シートを開発した木村教授(右)と山本さん=金沢工大

 金沢工大環境土木工学科の木村定雄教授らが二十三日までに、トンネル内壁のコンクリ
ートの崩落を防ぐ新工法を開発した。コンクリートと補強用の特殊繊維シートを一体化さ
せる技術で、関係者は全国の高速道路などの安全性向上に役立つと注目している。
 木村教授によると、トンネル内壁のコンクリート崩落は、内壁のつなぎ目周辺で発生し
やすい。一九九九(平成十一)年に山陽新幹線福岡トンネルでコンクリート片が落下する
など、全国で崩落事故が相次いだことを受け、補強技術の研究を進めてきた。
 研究では、木村教授と大手繊維企業が共同で、ガラス繊維を格子状に編んだシートを開
発。アルカリ成分による腐食に強いのが特徴で、西日本高速道路なども研究に参画し、実
用化にこぎ着けた。
 新工法では、トンネルの内壁を形成する際、内壁の型枠に特殊シートを敷いた上でコン
クリートを流し込む。これにより、コンクリートのつなぎ目が補強され、「はく落する可
能性はほぼなくなる」(木村教授)という。同大大学院一年の山本一也さんらが実験を繰
り返し、崩落防止効果を確かめた。
 新工法は、建設中の東九州自動車道中山トンネル(二百十五メートル)で採用された。
コンクリートの品質を高めるなどの従来工法に比べて費用対効果が優れ、維持管理費も低
減できるという。
 木村教授は「高速交通でのコンクリート崩落は人命にかかわる。重大事故防止のために
新工法の普及を図りたい」と話している。